失業等給付と65歳未満の年金

65歳未満に支給される特別支給の老齢厚生年金を受給している被保険者が、退職したが再就職をするため雇用保険の基本手当を受給する場合や、定年後も継続して雇用されることになったが報酬が大幅にダウンしたため、雇用保険から高年齢雇用継続基本給付金を受給する、あるいは、いったん退職して再就職したが再就職前の報酬から大幅にダウンしたため、雇用保険から高年齢再就職給付金を受給する場合は、老齢厚生年金が支給停止されることがあります。

なお、現在は65歳から支給される本来の老齢厚生年金は繰り上げできませんが、昭和36年4月2日以後生まれの男子が60歳になる2021年4月以降から繰り上げができるようになりますから、失業等給付との調整の対象となります。

雇用保険の基本手当、高年齢雇用継続基本給付金、高年齢再就職給付金の詳細については、失業生活マニュアルをご覧ください。

基本手当との調整

基本手当との調整

65歳未満に支給される特別支給の老齢厚生年金の受給権者が、雇用保険法により求職の申し込みをしたときは、その求職を申し込んだ月の翌月から次のいずれかに該当する月までの各月において特別支給の老齢厚生年金が支給停止されます。

  1. 基本手当の受給期間が経過したとき
  2. 基本手当の所定給付日数相当する日数分の基本手当の支給を受け終わったとき

また、求職の申し込みをした者が、特別支給の老齢厚生年金の受給資格を取得した場合は、受給権取得月の翌月から上記の1または2に該当する月までの各月において、特別支給の老齢厚生年金が支給停止されます。

支給停止の解除

調整対象期間の各月において、次のいずれかに該当する月があった場合は、その月の老齢厚生年金は支給停止にはなりません。

  1. 受給権者が基本手当の支給を受けた日と見なされる日およびこれに準ずる日として政令で定める日が1日もない月
  2. その月の分の老齢厚生年金について、在職老齢年金の報酬との調整(65歳未満の年金額の支給停止を参照)や併給調整等により、その全部または一部の支給が停止されている月
基本手当の支給を受けた日と見なされる日

基本手当の支給を受けた日と見なされる日とは、失業の認定日において失業の認定を受けたそれぞれの日を、その失業の認定が行われた日の直前に連続しているものと見なした日を言います。また、準ずる日として政令で定める日とは次の日を言います。

  1. 雇用保険法第21条(待期)の規定により基本手当を支給しないとされる期間に属する日
  2. 雇用保険法第32条第1項(就職拒否又は受講拒否による給付制限)の規定により基本手当を支給しないとされる期間に属する日
  3. 雇用保険法第32条第2項(指導拒否による給付制限)の規定により基本手当を支給しないとされる期間に属する日
  4. 雇用保険法第33条第1項(離職理由による給付制限)の規定により基本手当を支給しないとされる期間に属する日

事後精算

調整対象期間が終了した時点で、調整対象期間の各月のうち、老齢厚生年金の支給が停止された月の数から老齢厚生年金の受給権者が基本手当を受けたと見なされる日の数を30で除して得た数(1未満の端数は1に切り上げ)を控除して得た数が1以上であるときは、年金停止月のうち控除して得た数に相当する月数分の直近の各月については老齢厚生年金の支給停止が行われなかったものと見なされます。

支給停止解除月数=年金停止月数-基本手当を受けたと見なされる日の数÷30

事後精算

たとえば、自己都合で退職したため3ヶ月間の支給制限を受けた所定給付日数150日の老齢厚生年金の受給権者が、左図のように所定給付日数分基本手当を受給したので求職の申し込みをした翌月から8ヶ月間老齢厚生年金の支給が停止されたとします。

事後精算においては給付制限の期間は基本手当の支給を受けなかった期間と見なされますから、1月15日~2月14日の31日、2月15日~3月14日の28日、3月15日~4月14日の31日、合計90日基本手当が支給されなったとされる日に該当します。よって支給解除月数は年金停止月数(8)-90÷30=5となります。

高年齢雇用継続基本給付金、高年齢再就職給付金との調整

高年齢雇用継続給付

標準報酬月額がみなし賃金日額に30を乗じて得た額の61%未満であるときは、標準報酬月額に100分の6を乗じて得た額を老齢厚生年金額から減じます。

標準報酬月額がみなし賃金日額に30を乗じて得た額の61%以上75%未満であるときは、標準報酬月額の割合が逓減する程度に応じ、100分の6から一定割合で逓減するように計算された率を乗じて得た額となります。率を求める計算式は次の通りです。

  1. みなし賃金日額に30を乗じて得た額に100分の75を乗じて得た額・・・・・A
  2. 標準報酬月額・・・・・B
  3. (A-B)×485/1400・・・・・C
  4. 求める率={A-(B+C)}÷B×6/15

上記2パターンで得られた調整額に6分の15を乗じて得た額(高年齢雇用継続給付相当額)に標準報酬月額を加えた額が支給限度額(毎年度改定されます)を超えているときは、支給限度額から標準報酬月額を減じて得た額に15分の6を乗じて得た額を調整額とします。

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