支給の繰り上げ

支給繰り上げのケースとしては、特別支給の老齢厚生年金においては5パターン、本来の老齢厚生年金において1パターンの合計6パターンあります。老齢厚生年金を繰り上げるときは同時に国民年金の老齢基礎年金も繰り上げなければなりません。繰り上げの効果として、繰り上げた期間の長短によって年金額の減額率が変わり、減額された年金額が本来支給される年金額に戻ることはありません。

支給繰り上げを行ったときの減額率は1ヶ月につき5/1000(0.5%)です。特別支給の、本来の老齢厚生年金とも繰り上げできる最大年数は5年ですから、最大減額率は30%(70%支給)となります。

報酬比例部分、定額部分とも60歳から支給される場合

報酬比例部分、定額部分とも60歳から支給される場合の繰り上げ

このケースの対象者は、昭和16年4月2日~昭和21年4月1日の間に生まれた一般女子、昭和16年4月2日~昭和28年4月1日の間に生まれた障害者・長期加入者の特例適用者である男子、昭和16年4月2日~昭和33年4月1日の間に生まれた障害者・長期加入者の特例適用者である女子、昭和16年4月2日~昭和33年4月1日の間に生まれた坑内員・船員の特例適用者です。

60歳から報酬比例部分、定額部分とも支給されているので、繰り上げできるのは国民年金の老齢基礎年金だけです。右図では老齢基礎年金を65歳支給から60歳支給へ5年(60月)繰り上げますから、減額率は60×5/1000=0.3となり当初の年金額の70%が支給されることになります。それにともなって、定額部分は老齢基礎年金相当額が支給停止(つまりは経過的加算相当額を支給)となります。

定額部分が61歳~64歳の途中から支給される場合

定額部分が61歳~64歳の途中から支給される場合の繰り上げ

このケースの対象者は、昭和16年4月2日~昭和24年4月1日の間に生まれた一般男子、昭和21年4月2日~昭和29年4月1日の間に生まれた一般女子です。このケースでは、老齢基礎年金を一部繰り上げる場合と全部繰り上げる場合の2通りの繰り上げを選択することができます。

老齢基礎年金を一部繰り上げる場合
右図では、定額部分は本来なら2年間支給されるところを60歳からの5年間支給となるので、本来の額の40%が支給されることになります。これを老齢基礎年金に置き換えると、定額部分が40%になったことで残りの60%を繰り上げても定額部分とは重複しないので、この60%を5年繰り上げると支給率は70%になるため、60%×70%=42%となる。

したがって、60歳から支給される老齢厚生年金は減額なしの報酬比例部分と本来の額の40%になった定額部分、本来の額の42%となった老齢基礎年金となる。65歳からは、報酬比例部分と経過的加算、繰り上げせずに残していた老齢基礎年金の年金額40%相当額の老齢基礎年金加算額と繰り上げによる減額が行われた本来の額の42%の老齢基礎年金が支給されるということです。

老齢基礎年金を全部繰り上げる場合
定額部分は老齢基礎年金相当分が支給停止(つまりは経過的加算相当額が支給される)となり、老齢基礎年金は5年繰り上げますから30%の減額率となって本来の額の70%が60歳から支給されます。

報酬比例部分が60歳から支給される場合

報酬比例部分が60歳から支給される場合の繰り上げ

このケースの対象者は、昭和24年4月2日~昭和28年4月1日の間に生まれた一般男子、昭和29年4月2日~昭和33年4月1日の間に生まれた一般女子です。

60歳から報酬比例部分が支給されているので、繰り上げできるのは国民年金の老齢基礎年金だけです。老齢基礎年金はその全部が5年繰り上げられますから、減額率30%、つまり本来の額の70%で支給されます。

報酬比例部分が61歳~64歳の途中から支給される場合

報酬比例部分が61歳~64歳の途中から支給される場合の繰り上げ

このケースの対象者は、昭和28年4月2日~昭和36年4月1日の間に生まれた一般男子、昭和33年4月2日~昭和41年4月1日の間に生まれた一般女子です。

報酬比例部分、経過的加算、老齢基礎年金が繰り上げられます。右図では、報酬比例部分は支給開始年齢63歳から60歳へ3年(36月)繰り上げられますから、減額率は36×5/1000=18%、つまり本来の額の82%支給となります。経過的加算は5年繰り上げですから本来の額の70%支給、老齢基礎年金も同様に70%支給となります。

報酬比例部分、定額部分が同時に61歳~64歳の途中から支給される場合

報酬比例部分、定額部分が同時に61歳~64歳の途中から支給される場合の繰り上げ

このケースの対象者は、昭和33年4月2日~昭和41年4月1日の間に生まれた坑内員・船員です。

定額部分は、支給総額が変わらないので2年間支給されるものを5年支給にしますから本来の額の40%(2/5)支給となります。

老齢基礎年金については、『定額部分が61歳~64歳の途中から支給される場合』と同様に、繰り上げ支給の年金額は本来の額の42%支給となります。65歳から支給される老齢基礎年金は繰り上げた残りの40%が加算されますから、本来の額の82%支給となります。

報酬比例部分は、63歳支給開始を60歳に3年(36月)繰り上げますから、減額率は36×5/1000=18%、つまり本来の額の82%支給となります。繰り上げた経過的加算は本来の額の42%支給となり、65歳からは本来の額の82%支給となります。

特別支給の老齢厚生年金が支給されない者の場合

このケースの対象者は、昭和36年4月2日以後に生まれた一般男子、昭和41年4月2日以後に生まれた一般女子および坑内員・船員です。

65歳から支給される老齢厚生年金、経過的加算、老齢基礎年金を同時に60歳支給へ繰り上げると、減額率はそれぞれ30%となるので本来の額の70%支給となります。

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