報酬比例部分の額(物価スライド特例措置による額)

現在の老齢厚生年金の年金額は、過去の物価下落時に本来なら支給額もスライドして下げるべきところを据え置いてしまい、物価水準より高めの年金額となっています。景気が好転して物価や賃金も上昇して給付水準と物価水準が均衡するまでは、この物価スライド特例措置が継続されます。

物価スライド特例措置による額

物価スライド特例措置による額

老齢厚生年金の額は、平均標準報酬月額、給付乗率、被保険者期間の月数で決まります。この要素は報酬比例部分の額を構成する共通項目ですが、物価スライド特例措置による額を計算するときは、平均標準報酬月額に使用する再評価率は旧再評価率を、給付乗率は旧給付乗率を使用します。さらに、特例改定率を乗じて支給額の調整を行います。この特例改定率は固定された数字1.031に物価スライド特例措置による年金額改定率を乗じて得た数字になります。平成24年度の年金額改定率は0.978ですから、平成24年度の特例改定率は、1.008318となります。

旧再評価率は、生年月日に関係なく各被保険者期間ごとに率が異なります。また、旧給付乗率は、平成15年3月までの期間に対応したものは生年月日により1,000分の7.50~10.0を使用し、平成15年4月以降に対応したものは生年月日により1,000分の5.769~7.692を使用します。

具体的な数字(報酬比例部分の額(本来の額)と同じ条件です)を例えにして改正後の年金額を計算してみましょう。

  1. 生年月日は昭和51年7月1日
  2. 被保険者期間は平成10年4月1日から平成20年3月31日までの10年間
  3. 標準報酬月額は以下の通り
    • 平成10年4月~平成11年8月(17月) 200,000円
    • 平成11年9月~平成12年8月(12月) 200,000円
    • 平成12年9月~平成13年8月(12月) 220,000円
    • 平成13年9月~平成14年8月(12月) 220,000円
    • 平成14年9月~平成15年3月(7月) 240,000円
    • 平成15年4月~平成15年8月(5月) 240,000円
    • 平成15年9月~平成16年8月(12月) 240,000円
    • 平成16年9月~平成17年8月(12月) 240,000円
    • 平成17年9月~平成18年8月(12月) 280,000円
    • 平成18年9月~平成19年8月(12月) 280,000円
    • 平成19年9月~平成20年3月(7月) 300,000円
  4. 標準賞与額は以下の通り
    • 平成15年度 840,000円
    • 平成16年度 840,000円
    • 平成17年度 980,000円
    • 平成18年度 980,000円
    • 平成19年度 1,050,000円
  5. 再評価率は以下の通り
    • 平成5年4月~平成12年3月 0.99
    • 平成12年4月~平成17年3月 0.917
    • 平成17年4月~平成18年3月 0.923
    • 平成18年4月~平成19年3月 0.926
    • 平成19年4月~平成21年3月 0.924

物価スライド特例の額を計算する式は、基本的に従前の額を求める式(報酬比例部分の額(本来の額)を参照)と同じで、最終的に特例改定率を乗じます。

平成15年3月までの平均標準報酬月額は標準賞与額を除いて算出し、平成15年4月以後は加えて平均を出します。再評価率は新再評価率を使用し、生年月日昭和17年4月2日以降、被保険者期間平成10年4月から平成20年3月までの率を使用します。

これらの条件で算出すると、平成15年3月までの平均標準報酬月額は200,855円、平成15年4月以後の平均標準報酬月額は314,446円となりました。給付乗率は生年月日が昭和21年4月2日以後なので平成15年3月までの平均標準報酬月額には1000分の7.50を、平成15年4月以後の平均標準報酬月額には1000分の5.769を使用します。被保険者期間の月数はそれぞれ60月です。

平成15年3月までの年金額は89,587円、平成15年4月以後の年金額は107,881円という結果となり、2つを合計すると197,468円が支給される年金額となります。

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