報酬比例部分の額(本来の額)

老齢厚生年金の年金額は、現在物価スライド特例措置による計算方法で算出されていますが、物価が上昇し本来の給付水準と物価水準とが釣り合えば本来の算出方法で年金額を計算します。本来の年金額は平成12年改正後の計算式で得た額と従前の計算式で得た額と比べて、いずれか高い方を年金額とします。

改正後の額

老齢厚生年金の額は、平均標準報酬月額、給付乗率、被保険者期間の月数で決まります。この要素は報酬比例部分の額を構成する共通項目ですが、改正後の額を計算するときは、平均標準報酬月額に使用する再評価率は新再評価率を、給付乗率は新給付乗率を使用します。

新再評価率は、生年月日によって各階層で率が異なります。また、新給付乗率は、平成15年3月までの期間に対応したものは生年月日により1,000分の7.125~9.5を使用し、平成15年4月以降に対応したものは生年月日により1,000分の5.481~7.308を使用します。

具体的な数字を例えにして改正後の年金額を計算してみましょう。

  1. 生年月日は昭和51年7月1日
  2. 被保険者期間は平成10年4月1日から平成20年3月31日までの10年間
  3. 標準報酬月額は以下の通り
    • 平成10年4月~平成11年8月(17月) 200,000円
    • 平成11年9月~平成12年8月(12月) 200,000円
    • 平成12年9月~平成13年8月(12月) 220,000円
    • 平成13年9月~平成14年8月(12月) 220,000円
    • 平成14年9月~平成15年3月(7月) 240,000円
    • 平成15年4月~平成15年8月(5月) 240,000円
    • 平成15年9月~平成16年8月(12月) 240,000円
    • 平成16年9月~平成17年8月(12月) 240,000円
    • 平成17年9月~平成18年8月(12月) 280,000円
    • 平成18年9月~平成19年8月(12月) 280,000円
    • 平成19年9月~平成20年3月(7月) 300,000円
  4. 標準賞与額は以下の通り
    • 平成15年度 840,000円
    • 平成16年度 840,000円
    • 平成17年度 980,000円
    • 平成18年度 980,000円
    • 平成19年度 1,050,000円
  5. 再評価率は以下の通り
    • 平成10年度 0.979
    • 平成11年度 0.978
    • 平成12年度 0.978
    • 平成13年度 0.977
    • 平成14年度 0.983
    • 平成15年度 0.986
    • 平成16年度 0.987
    • 平成17年度 0.988
    • 平成18年度 0.988
    • 平成19年度 0.988
改正後の額

平成15年3月までと4月以後では、賞与の取り扱い、給付乗率が異なります。したがって、平均標準報酬月額を算出するには平成15年3月までと4月以後を分けて計算しなくていけません。

平成15年3月までの平均標準報酬月額は標準賞与額を除いて算出し、平成15年4月以後は加えて平均を出します。再評価率は新再評価率を使用し、生年月日昭和17年4月2日以降、被保険者期間平成10年4月から平成20年3月までの率を使用します。

これらの条件で算出すると、平成15年3月までの平均標準報酬月額は208,216円、平成15年4月以後の平均標準報酬月額は336,887円となりました。給付乗率は生年月日が昭和21年4月2日以後なので平成15年3月までの平均標準報酬月額には1000分の7.125を、平成15年4月以後の平均標準報酬月額には1000分の5.481を使用します。被保険者期間の月数はそれぞれ60月です。

平成15年3月までの年金額は89,012円、平成15年4月以後の年金額は110,789円という結果となり、2つを合計すると199,801円が支給される年金額となります。実際はこの金額を12等分した2月分を2月ごとに支給という形になります。

従前の額

従前とは平成12年改正以前ということで、平成6年の再評価率と旧給付乗率を用いて計算される年金額を従前の額といいます。物価スライド特例措置が終了すればこの従前の額と改正後の額を比較して金額の多い方を年金額とします。

では、改正後の額と同条件で従前の額を計算してみましょう。

平均標準報酬月額を算出する再評価率は旧再評価率を使用し、給付乗率も旧給付乗率を使います。改正後の額を算出する計算式と従前の額を算出する式との大きな違いは、最後に従前額改定率を乗じることです。この率は年金額の改定率と同じものを使い、毎年改定されます。平成24年度改定率は0.983でした。

  • 旧再評価率は次の通り
    • 平成5年4月~平成12年3月 0.99
    • 平成12年4月~平成17年3月 0.917
    • 平成17年4月~平成18年3月 0.923
    • 平成18年4月~平成19年3月 0.926
    • 平成19年4月~平成21年3月 0.924

これらの条件で算出すると、平成15年3月までの平均標準報酬月額は200,855円、平成15年4月以後の平均標準報酬月額は314,446円となりました。給付乗率は生年月日が昭和21年4月2日以後なので平成15年3月までの平均標準報酬月額には1000分の7.50を、平成15年4月以後の平均標準報酬月額には1000分の5.769を使用します。被保険者期間の月数はそれぞれ60月です。

平成15年3月までの年金額は88,848円、平成15年4月以後の年金額は106,992円という結果となり、2つを合計すると195,840円が支給される年金額となります。

従前の額は195,840円、改正後の額は199,801円となり、改正後の額が支給される年金額となります。

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