一般的な障害厚生年金の支給要件

被保険者が疾病にかかり、あるいは負傷して、1つの部位に障害を残すこととなり、障害認定日において障害等級に該当する障害の状態にあると認定された場合の一般的な障害厚生年金の支給要件を解説します。

被保険者に関する要件

疾病にかかり、または負傷し、その疾病または負傷及びこれらに起因する疾病につき初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日(つまり初診日)において被保険者でなければなりません。

したがって、70歳以上の人が加入する高齢任意加入被保険者であっても、初診日に被保険者であれば障害厚生年金が支給されることがあります。また、共済組合の組合員であった期間中に傷病が発生しても、初診日が厚生年金保険の被保険者期間にあれば、障害厚生年金が支給されます。

障害に関する要件

障害認定日において、障害等級1級、2級、または3級に該当する程度の障害の状態であることが必要です。

障害厚生年金の裁定請求書には、障害の状態の程度に関する医師又は歯科医師の診断書等のほか、障害が呼吸器系結核、肺化膿症、珪(けい)肺(これに類するじん肺症を含む)、その他認定または診査に際し必要と認められるものによるものであるときは、その障害の状態の程度を示すレントゲンフィルムを添えなければなりません。

障害等級と障害の程度
部位等障害等級1級障害等級2級障害等級3級
両眼の視力の和が0.04以下のもの両眼の視力の和が0.05以上0.08以下のもの 両眼の視力が0.1以下に減じたもの
両耳の聴力レベルが100デシベル以上のもの・両耳の聴力レベルが90デシベル以上のもの
・平衡機能に著しい障害を有するもの
両耳の聴力が、40センチメートル以上では通常の話声を解することができない程度に減じたもの
・そしゃく(咀嚼)の機能を欠くもの
・音声又は言語機能に著しい障害を有するもの
そしゃく又は言語の機能に相当程度の障害を残すもの
上肢・両上肢の機能に著しい障害を有するもの
・両上肢のすべての指を欠くもの
・両上肢のすべての指の機能に著しい障害を有するもの
・両上肢のおや指及びひとさし指又は中指を欠くもの
・両上肢のおや指及びひとさし指又は中指の機能に著しい障害を有するもの
・1上肢の機能に著しい障害を有するもの
・1上肢のすべての指を欠くもの
・1上肢のすべての指の機能に著しい障害を有するもの
・1上肢の3大関節のうち、2関節の用を廃したもの
・1上肢のおや指及びひとさし指を失ったもの又はおや指若しくはひとさし指を併せ1上肢の3指以上を失ったもの
・おや指及びひとさし指を併せ1上肢の4指の用を廃したもの
下肢・両下肢の機能に著しい障害を有するもの
・両下肢を足関節以上で欠くもの
・両下肢のすべての指を欠くもの
・1下肢の機能に著しい障害を有するもの
・1下肢を足関節以上で欠くもの
・1下肢の3大関節のうち、2関節の用を廃したもの
・長管状骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの
・1下肢をリスフラン関節以上で失ったもの
・両下肢の10趾の用を廃したもの
体幹体幹の機能に座っていることができない程度又は立ち上がることができない程度の障害を有するもの体幹の機能に歩くことができない程度の障害を有するもの脊柱の機能に著しい障害を残すもの
生活前各号に掲げるもののほか、身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの 前各号に掲げるもののほか、身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であつて、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの前各号に掲げるもののほか、身体の機能に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの
精神・精神の障害であって、前各号と同程度以上と認められる程度のもの
・身体の機能の障害若しくは病状又は精神の障害が重複する場合であつて、その状態が前各号と同程度以上と認められる程度のもの
・精神の障害であって、前各号と同程度以上と認められる程度のもの
・身体の機能の障害若しくは病状又は精神の障害が重複する場合であつて、その状態が前各号と同程度以上と認められる程度のもの
・精神又は神経系統に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの
・傷病が治らないで、身体の機能又は精神若しくは神経系統に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するものであって、厚生労働大臣が定めるもの

保険料納付に関する要件

保険料納付要件

初診日にの前日において、初診日の属する月の前々月までに国民年金の被保険者期間があるときは、その被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間がその被保険者期間の3分の2以上であることが要件です。

国民年金の被保険者期間とは、厚生年金保険等の被用者年金制度の加入期間のうち、昭和36年4月前の期間、20歳未満および60歳以後の期間も国民年金の被保険者期間と見なします。

この保険料納付要件は、前提として「国民年金の被保険者期間があるときは」とされていますから、図のように初診日の前月に被保険者の資格を取得した場合などは、初診日の属する月の前々月までには国民年金の被保険者期間はありませんから、この要件は適用されません。

保険料納付要件の経過措置
初診日が平成38年4月1日前にある傷病による障害については、初診日の前日において、初診日の属する月の前々月までの1年間に保険料納付済期間および保険料免除期間以外の国民年金の被保険者期間(つまりは滞納期間)がなければ、保険料納付要件は満たされます。ただし、初診日において65歳以上である時は適用されません。

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